『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(アーシュラ・K・ル=グウィン、大久保ゆう 訳、フィルムアート社、1998→2021)
http://filmart.co.jp/books/novel/steering-the-craft/
「はじめに」にあるとおりこれは初心者向けの書籍ではなくむしろすでに実作に励んでいる作家向けである。テーマごとに章立てされ、それぞれ過去の作品から実例が引かれ、最後に課題が付される。ワークショップや合評会で使えばより効果的なのだろう。原著が英語で書かれているという点を割り引いても十分に創作の参考になる内容であるし、背筋の伸びる記述も多々あってよかった。
技巧(クラフト)は技巧であるがその用い方や意の払い方の濃淡からは技巧以上のものがのぞき出てしまう。そのような怖さを改めて考えるために精神論ではなく技巧を説くのである。芸術(アート)とは作家の意を超えるコントロール不可能な何かなのかもしれず、かつそれが可能となるためには技巧が必要であるということ。何を書くかとどう書くかは不即不離、矯められるものを精いっぱい矯めることしかできないだろうということか。
「訳者解説」で夏目漱石の『文学論』への言及があった。そちらもいいかげん読まないといけないと思った。