日本建築の自画像

投稿者: | 2019年9月23日

日本建築の自画像 – 香川県立ミュージアム

「自画像」とはつまり、「日本建築」「建築における日本的なもの」が「日本建築」自身によってどのように表現・規定されてきたのか、というようなことで、明治期の西洋の意匠・技術とのせめぎあいから発して多様な建築による表現がなされてきたことを、特徴的な事例を通じて検証する重厚な展示。キーとなるいくつかの固有名詞を踏まえつつ、当地の香川県庁舎がどのように位置づけられるか、そして昨今のコミュニティに関する議論や地域アイデンティティの議論にも接続していく。

図面や模型といった資料、それもコピーではなくできるだけ実物を展示するというこだわりが見られ、また実証的な手続きによる丁寧な考証がおこなわれており、博物館の矜持が垣間見える。

具体性や細部へのこだわりは当然生じる。それだけ豊かな素材であることは間違いない。同時に、より抽象度の高いレイヤーでの分析も必要である。学芸員の方など見ていると、抽象度を上げるということは情報量を切り捨てるということではなく、むしろ豊富な情報量に支えられた抽象化こそが分析に資するのだろうと思う。この点は省みて参考にしたい。

 

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