Enigma – Le Roi Est Mort, Vive Le Roi!
10代の頃にはまったく聴く気がしなかったタイプの音で、どちらかというとEnigma訴訟(文化の盗用による訴訟の代表的事例として有名)の方で知っていた。
[参考] http://geiren.org/news/2007/02.html
今聞くと実にノスタルジックな音ではあるが、内面世界への志向とゆったりしたビートの反復が昨今のメディテーションの流行に合致しそうではある。YouTubeによくある瞑想用のアンビエント音源と似た質感というか。
Enigmaに限らず、90年代のいわゆるエスノポップやアンビエント風のポップスが、YouTube等で素朴に「美しい音楽」として再評価されている光景を見ると、90年代に10代を過ごした身としては不思議なものだなと思う。
文化の盗用という際には南北問題や第三世界における搾取の問題などの大きな構造的問題が背景にあり、声なき主体からの搾取ということが厳しく言われていたと思うが、そういう視点がごそっと抜け落ちて単純に「美しい」と評価される。
Enigma訴訟も条件付きで和解したのだし、権利関係さえクリアにすれば問題ないのでは? という見解もあろうが、結局は文化における主体とは一体誰なのかという形而上学に至ってしまう。
「どの口が何言うかが肝心」――日本語ラップの「メッセージ」と「主体」 ← これは日本語ラップにおけるメッセージと主体についての記事だが、敷衍するとかなり射程の広い議論ができると思う。