峰 厚介(Sax)、向井滋春(Tb)、原 朋直(Tp)、野力奏一(P)、鈴木良雄(B)、奥平真吾(Ds)。
一曲目、Elvin Jones作の”EJ’s Blues”。直球のファンキーなマイナー・ブルースのテーマから入り、ホーンがそれぞれ長めの尺でソロを取る。トロンボーンのソロは、ペンタトニック・スケールを活かしつつ歯切れのよいフレーズと伸びやかなフレーズの対比で構成。続くトランペットのソロはやや抑えめのストレートなフレーズから徐々に高ぶってハイノートにまで上がっていく。テナー・サックスのソロはベースが少し外すようなフレージングをしたのと相まってちょっとずれたような感じもしたが、ブルージーなフィーリングに回収する。ピアノはブロックコードの動かし方が特徴的で、ベースが一音に滞留した場面ではその上で細かくリハモナイズしてモーダルなブルース感が出た。キメのあとドラム・ソロからのテーマでエンディング。
二曲目はMiles Davisの”Freddie Freeloader”。なんとなく今日のムードが掴めてくる選曲。テーマで3管のアンサンブルとピアノが交互に前に出る感じからソロ回しに入る。トランペットはマイルスマナーを意識している感じの演奏。
マイルスのトランペット・プレイは、ミュートを(1940年代後半〜1950年前半に使用したミュートは「カップ・ミュート」が中心で、「ハーマン・ミュート」を頻繁に使用するのは1950年代中頃から)使用し、自身の特性を考慮し、ビブラートをあまりかけず、跳躍の激しい演奏などといったテクニックにはあまり頼らない面が挙げられる。また、ディジー・ガレスピーのようなハイトーンを避け、中音域がトランペットにおいて最も美しい音が出る、として多用し、音から音へ移動する場合、半音階を用いている。なお、これらの奏法が「リリシズム」に例えられることがある。[*1]
三曲目はWayne Shorter “Infant Eyes”。ピアノのイントロからテナー・サックスのテーマに入り、3管のアンサンブルを挟んで各楽器がソロ回しする。特徴としては例えばテナー・サックスがソロを取る際に、他の2管(トランペットとトロンボーン)が控えめにハモリに入るところ。3管、ワンホーン+2管でいろいろな組み合わせのアンサンブルを作っていた。この曲はゆったりしたバラードだが、モードチェンジをソロのフレージングにどう活かすかに個性が出たと思う。この辺は個人的に要勉強。
四曲目は”A Night In Tunisia”。トランペットはいきなりDizzy Gillespieとまでは言わずとも、やはりテンションを上げてハイノートを叩いている。テナー・サックスも調子のよい豪快なブロウ。あと、全体的に流れるようなウォーキング・ベースに耳が向く。
アンコールで”What A Wonderful World”。最初3連のバラードで始まって、このまましっとり終わるかと思ったら途中でドラムが4ビートにリズムチェンジし、しっかりスウィングしてエンディング。
モーダルな感じを含むスウィングするブルース感覚が基軸で、フロントのホーンのアンサンブルとソロをしっかり聴かせる構成だったと思う。ピアノのリハモナイズ感覚が興味深い。ドラムに奥平が起用されているのも(昨日の感想の続きで)納得できる。これを懐古趣味と取ることももちろんできるだろうと思うが、他方で「ジャズなるもの」というよくわからないなにかのひとつの核をつかんでいるのも確かだろう。可能性と限界と、常に両面を見ていかないといけない。