奥平真吾(Ds)、岡 淳(Sax)、堀 秀彰(P)、金森もとい(B)、馬場孝喜(G)。生配信を見逃したのでアーカイブ配信を観た。
奥平、堀、金森、岡の四名によるバンドが「奥平真吾 THE NEW FORCE」で、それにギターの馬場が「+1」するという編成[*1]でのライブ。いくつかウェブの記事やインタビューを見たところ、奥平は11歳でファースト・アルバムをリリースした[*2]早熟なドラマーで、現在は自分についてジャズ・ドラマーであるというアイデンティティを強調している。ジャズ・ドラマーとしてのアイデンティティを追求した結果として「スウィングすることとファンキーなこと」をプレイの根本においている。[*3]昨今のプレイヤーは特定のディシプリンにこだわるよりむしろ多領域をまたぐようにプレイすると言われるが、それとは対照的である。
一曲目はベース、ドラム、テナー・サックスによるトリオ演奏。サックスが短いフレーズを様々な音程に平行移動させて、ベースとの対比でクールな渋みを出し、ドラムもシンプルなフレージングでそれに加わる。この三者だけで十分に音楽が成立していて、大変かっこよい。スウィンギーな4ビートを基調に時折スクエアなカリプソっぽい8拍のパターンとリズムチェンジする。サックスと掛け合いの形になるベースも、バッキングの部分と主旋律になる部分との対比が細かく鮮やかで、技術を感じる。
二曲目は3のリズム。バップ以降のマナーの楽曲で、転調が効果的に用いられる。しかしモーダルな感じというよりは、しっかり転調による切断の断面を強調するような用い方。テナー・サックスが音数少なめに、ロングトーンを用いながら転調を乗り切るのに対して、ピアノはわりと細かくリハモナイズしている感じがした。
三曲目は変形ブルース。変拍子やテンポチェンジを含む難曲とのことである。やはりピアノのリハモ感が大変興味深く、ブルース・フィーリングを保ちながらモーダルになる感じがかっこよい。テンポチェンジで速いスウィンギーな4ビートになったところでまったくブレないベースと、その上のピアノの浮遊感で、浮き立つような勢いのある演奏になっていた。
アンコールはスタンダード。ジャズ・スタンダードでよくある楽曲中の転調の感覚がオリジナル曲での転調の使い方と通じるように思った。
ドラムがリーダーのバンドで、奥平はシンプルで力強いフレーズを叩く一方で、常に他のメンバーの演奏を引き出すような緩急のダイナミクスがあって、旋律楽器のみならずリズム・セクションについても良い演奏が聴けた。
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*1 編成については多少調べたもののよくわからないが(馬場がメンバーなのか「+1」なのかなど)、ライブ終わりのMCではこのように表現していた。
*2 https://www.discogs.com/ja/master/1831693-Shingo-Okudaira-Maiden-Voyage
*3 http://pit-inn.com/artist_live_info/220927%e5%a5%a5%e5%b9%b3%e7%9c%9f%e5%90%be-the-new-force1/