今村祐司(Per)、松風鉱一(Sax)、渋谷 毅(P,Or)、上村勝正(B)、外山 明(Ds)。
今村祐司について:
1939年3月30日東京都生まれ。パーカッション・プレイヤー。高校時代から活動を始め、松岡直也(p)、渡辺貞夫(as)、日野皓正(tp)、日野元彦(ds)、今田勝(p)などのグループに参加。80年代には高橋知己(as)との双頭グループや、本田竹曠(p)のグループで活動。その後、自己のグループを中心に活動している。リーダー作『エアー』『ユージン・レインボー』など。サイドマンとしては多数の参加アルバムがある。[今村祐司 – CDJournal]
例えばDiscogsで検索すると、年代ごとに今村がクレジットされた音源の数(リイシュー等で集計上重複はある)がわかり、今村が70~80年代以降、日本のジャズシーンにおいて重要なポジションにいたことが推察される。また、公式音源ではなかったのでリンクはしないが、動画配信サイトで聴ける「Yuji Imamura & Air」の音源は、エレクトリック・マイルスの影響を色濃く受けながら、間の多い呪術的なサイケデリック音楽へと昇華していて大変興味深い。その他、いわゆる「和ジャズ」の”いいところ”の音源に多数関与しているのがわかる。
今日のPIT INNでの演奏ではパーカッションはコンガが主だった。コンガの音は倍音成分のコントロールや音の高低、ミュートの仕方など、細かい演奏法がある。今回は今村リーダーということで全体的にミックスにおいてパーカッションが大きめに出ていたが、そうすると倍音成分を含むコンガの音色はむしろ強すぎるくらいに響く音である。またバンドの演奏も全体的に間を活かし、音量面は抑制的で、結果としてパーカッションの細かい刻みがしっかり聴こえた。
そうするとBPMでは測れない演奏のスピード感とグルーヴが出てくる。アップな曲が速いと感じるとは限らないし、間が多ければ停滞しているとも限らない。それに強拍が必ずしもリズムを規定するとも限らないし、拍節感が薄いアンビエントなムードからグルーヴが生まれることもある。いろいろと発見がある。
ドラムの外山との関係も興味深い。外山は終始今村のプレイを観察していて、ドラムでビートを刻むよりむしろ、今村の音に合いの手のように音を加えていく。時折、コンガのパターンにマルチリズムでかぶせかかる場面もあったが、どちらかというと全体的に抑制的。音量の問題もあるのだろうと思う。
その他、サックスで抑えめな中に攻めるフレージングが多々あった松風、シンプルなペンタトニックを活かしつつクロマチックな響きと行き来するピアノやモノフォニックなフレージングを効果的に用いるオルガンの渋谷、打楽器のグルーヴをしっかり支えつつ積極的に旋律に絡んでいく上村のベースと、ベテラン勢の演奏が冴えるステージだった。コンガが入ることで、ジャズコンボが一般的に前提にしているものが問い直される場面があり、学びが多かった。また、コンガ等パーカッションは目立たないようだが、逆にライブ映えする側面があるのだなということもわかる。