古谷 淳(P)、西口明宏(Ts,Ss)、千北祐輔(B)、服部正嗣(Ds)。
公式プロフィールによると:古谷淳はバークリー音楽院卒の若手ピアニストで、現在山梨県を拠点に活動している。プレイのみならず作曲でも評価が高い。[*1] 他のメンバーもネットでちらっと見る限り、若手の有望株だそうである。今日と同じメンバーでの旧作『Southbound』を聴いている。ビバップ以降のコンテンポラリーな記法によるジャズ。モーダリティを基本にしながらそれを再度コーダルな運動性で分節して、それをグリッドの細かいドラムによるパターンと骨太なベースで複雑に構成する。
特にベースの動きと和声の関係が面白いと思った。
テンションノートを活かした鮮やかな和声とピアノの音色が特徴的で、オンベースでコーダルに動くモーダリティに対するピアノの右手と左手のアプローチの巧みさは作曲者ならではだろう。
そういえばPIT INNの配信では案外ピアノがリーダーのバンドは少ないので、そういう意味でも特徴的な音像である。
ライブ演奏についていうと、上述のような作曲上の高度なコンセプトがあるうえにインプロヴィゼーションを導入していて、例えば二曲目ではソプラノ・サックスとピアノのペアに対してベースとドラムのペアが対置され、後者のペアがインプロヴィゼーション的に動くのがテーマの旋律との対比で際立つ。また、四曲目は楽曲全体でぐぐっとクレッシェンドしていくような波のような音響の上でテナー・サックスがテーマを朗々と歌い、徐々に全体が高揚してくる。インプロと作曲の境界がじりじりとなくなって、気がつくとテーマに入っている、というような巧みな演奏があった。
アンコールでは敬愛する人物としてジョージ・ガゾーン[*2] を挙げて楽曲を演奏した。教育者としても著名で、バークリー音楽院でも教えていたというから古谷らと接点があったのかもしれない。
*1 https://www.junfuruyamusic.com/biography
*2 https://georgegarzone.com/