三日目は早坂紗知が1998年から率いていたサックスカルテット”Black Out”の一夜限りの復活ライブ!
結成当初からのメンバー林栄一さんと初参加”魂のテナー”登敬三さんをお招きし、”New Black Out”のサウンドがどう鳴り響くのか、こちらもワクワクが止まりません![http://pit-inn.com/artist_live_info/220917tres-3days/]
メンバーは早坂紗知(Sax)、RIO(Bs)、林 栄一(As)、登 敬三(Ts)、永田利樹(B)、竹村一哲(Ds)。
↑ 検索していて見つけたBlack Outの音源。素晴らしいです。特に「前編」でかかる音源。
四管による四声のアンサンブルが主軸だが、声部がきっちり配置されたクラシカルな四重奏だけではなく、各ホーンがフリーに歌うように絡み合い、全体としてマッスな高揚感を得るという場面も多くある。そういった四声の部分と、各プレイヤーのソロ回しの部分が対比的に展開され、ときに重なり合ったり、キメで合わせたりしていく。
したがってコード進行の複雑さで攻めるというよりは、おおらかな反復基調の楽曲構造の上で四ホーンの特性を活かしながらどのようにアンサンブルを拡げていくかということに主眼があるように感じた。とはいえ単調さはなく、例えば一曲目では各ホーンのソロと四声のキメを交互に展開するが、マイナー調のところを早坂のソロのときにベースに指示を出してメジャーに強引に転調してまたマイナーに戻るというような技を見せた。あるいは四曲目の”Black Out”ははじめアルト・サックス二本の掛け合いにバリトン・サックスとテナー・サックスが絡み、四拍と三拍でゆらぎながらアルトのソロ、キメを経てベースのフリーなソロがあり、そこからフェイドインするようにソロが引き継がれていって、四声のテーマで早坂のマルチリード奏法によって実質的に五声、そこから再度バリトン・サックスのソロを経て九拍のドラム・ソロからエンディング、と怒涛のアレンジである。
四声の部分について、例えばバリトン・サックスがベースに当たるラインを吹き、アルト・サックス二本が対旋律的に呼応し、テナー・サックスがさらに厚みを加えるというような、いわゆるクラシカルな四重奏のフォーマットで丁寧に作られた部分と、一応役割分担はありつつもそれぞれがフリーに吹くその四声が塊になっていく部分とがあった。例えばミンガスの”Moarnin'”で後者のフィーリングが顕著だった。
この二つの志向、つまり丁寧にアンサンブルをアレンジして組み上げる部分と、フリーに四声が絡み合う部分と、二つの特徴的なとがりがあって、大変熱量のある演奏だった。
三曲目がバリトン・サックスのRIO作曲の楽曲だった。これは少し他の曲と違う個性が出ていて、四拍-三拍の往還と転調を含むわりと緻密に練られた四重奏で、一曲廻るとなにかインナートリップ感がある良い曲だった。プレイヤーとしても、バリトン・サックスの音域を活かしつつエモーショナルに歌い上げる良いプレイが随所にあった。