敬称略。
永田利樹(B)、RIO(Bs)、早坂紗知(Sax)、伊藤志宏(P)、大儀見元(Per)、ゲスト:SAYAKA(Vln)。
Baila TReSは五人組。早坂紗知、永田利樹、RIOの親子ユニットTReSに伊藤志宏、大儀見元の二人が加わり、TReS+2として活動してきたバンド。[*1] 今回はヴァイオリン奏者のSAYAKAをゲストに迎え、六人での演奏。
ドラムレスの編成で、大儀見のパーカッションと永田のベースが変拍子や複雑なクロスリズムで土台を作る。ピアノはラテンの定型的なフレーズも弾きつつそれにとらわれない自在なパターンやフレージングで速弾も鮮やか。二管がその上で対旋律的な動きを見せたりしながら、ラテン~ブラジルなど無国籍調の楽曲を演奏する。
特定のパターンが繰り返されることもあるが、クラーヴェのように常に支配的に鳴っているわけではなく、随時フレキシブルな演奏に組み込まれ、形を変えていく。パーカッシヴになりすぎないというか、特定のパターンの反復に引き戻される力とそこから離れる力がともにせめぎ合っているようなテンションがある。それは大儀見のパーカッションについてもそうだし、伊藤のピアノにも顕著。
一曲目でパーカッションが叩いたパターンのひとつ(イメージ図)。これだけストイックに繰り返しても十分グルーヴするだろうというところで、しかし単調にしないでむしろダイナミックにうねる展開を引き寄せるのがこのバンドのカラーかと思う。そこはラテンなダンス音楽ではなくジャズなのだという主張だろうか。
パーカッシヴな音像に対して非常にコンシャスで、バリトン・サックスなどもタンギングを駆使して細かいパーカッシヴなフレーズを吹くなど、全体的にリズム指向ではあるが、ミニマルな反復基調にはならない。常に展開するチャンスを伺っているというか、自由にフレーズに敷衍することができるというか。
カバー曲の選曲もよく、二管のフロントにヴァイオリンが加わったことでより重奏が厚くなったが、三声のところは少しゴチャッとした印象もなくはなかった。むしろ管同士が掛け合いをし、ヴァイオリンがピアノやベースとインタラクションしている時間のほうが、音像が整理されている分、スリリングな緊張感が出ていたような気もする。全体として、パーカッシヴなリズムへの意識とメロディックにドラマを展開する方向性とがせめぎ合うようなところが特徴のように思われた。
*1 https://www.hmv.co.jp/en/artist_Baila-TReS_000000000800319/item_Baila-Tres_9859932