敬称略。
宮崎勝央(As)、八木美恵子(P)、入船裕次(B)、佐竹尚史(Ds)。演奏に対する姿勢や作曲について改めて考えさせられる回だった。
振り返ってみるとピットインとのお付き合いも28年近く。やっとここへ来てお客様の手ごたえを感じてきた。ずっとずっと耐えてきたこの熱い思いをこの夜にぶつけたい。優しくて、力強くて、ハッピーな音楽をお送りします。ピットインでお待ちしております![http://pit-inn.com/artist_live_info/220914%e5%ae%ae%e5%b4%8e%e5%8b%9d%e5%a4%ae-%e3%82%ab%e3%83%ab%e3%83%86%e3%83%83%e3%83%88/]
たとえば一曲目は「78歳でタクシードライバーをしているおじのために作った曲。おじは若い頃バンドマンで、自分にとっては父親の次に支援してくれた人」という「タクシーマン」。ブギーなブルース調と4ビートを行き来する、軽快な4のノリの曲である。また、4曲目は「母のために作った曲」というソフトなボッサのバラードである。
こういうパーソナルな動機と音楽演奏が密に合わさっていて、客席も交えて実に親密な雰囲気で演奏が進む。これはこれでひとつのあり方かと思う。
また、宮崎のアルト・サックスのソロは、モチーフとしてのテーマを堅実に踏まえながらスケールやアルペジオで拡げていくのが主で、そういう意味でもテーマ=主題の存在意義、さらに言えば「作曲する」とはどういうことなのかという根本的な問が浮かんだりもする。アルト・サックスはソロが二回ある曲もあったが、一回目はわりとテーマに忠実に、二回目は比較してより伸びやかに、という違いはあったように感じた。とはいえこのモチーフとしてのテーマの存在意義についてはよく考えたいと思う。
MCではメンバーへの細やかな関心を示して、こちらも実にアットホームである。おそらくメンバーとも長い付き合いなのだろうなと、こちらもいつしか親密さに引き込まれている。
作曲されたテーマを「堅実に」踏まえた「手堅い」演奏、という表現をしてみたくなるが、こういう言い方はジャズプレイヤーにはどのように感じられるのだろうか。
アンコールで宮崎の「十八番」というC.パーカーの「Confirmation」で腕前を示して終了。全体としてノリの明確なリズムとテーマを大事に踏まえるフレージング、奇をてらわないプレイという音楽面を、とてもパーソナルな情のようなものが裏打ちしていて、これはこれでジャズライブのあり方かと納得した。