小説を読んでいて、何かの予兆を感じると苦しくなる。最近とみにそうである。
暴力や破滅の予兆はもちろん、喜びや安堵や官能の予感ですら苦しい。とにかく何かを予感させたり、何かの気配を感じたり、何かの予兆が忍ばせてあったりすると、そういうものの影が苦しい。
体調が悪いのである。
あらゆる物事や人影や言葉やイメージや物音からある種の兆候が感じ取られるというのは実に苦しいものである。世間のあらゆる物事が自分に言及しているような気がする状態、これは地獄である。
やっと苦しい時期が過ぎたような気がしている。
禍福は糾える縄の如し。まさにこれ。いわば今はどん底の状態で、世間からすれば没落したオワコンなんだろうけれども、ようやく心の平安と人間としての尊厳を取り戻せそうである。
こういうものは本当にかけがえのないものだ。
私は改めて、平和主義者であると思った。