『ロジカル・ディレンマ ゲーデルの生涯と不完全性定理』ジョン・W・ドーソン Jr、村上祐子・塩谷賢訳、新曜社、2006
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ゲーデル没後遺物のカタログを作成した著者による伝記。淡々と事実に語らせる一方でゲーデルの「パラノイア」をいかに彼の思想と照応させるかというような深く抉る解釈も挟まれ、まさに「ディレンマ」としか言いようのない錯綜した人物像を描出する。
ゲーデルは内観の力を信じる一方で、体系を十分に理解するためには、その外に踏み出さなければならないと認めることでバランスをとっていた。本書で見てきたように、内的観点と外的観点とを区別するのは、決定不可能な言明の真理はメタ数学的にのみ考えられるとみなす不完全性定理で重要となるばかりではなく、内的相対化のもとで不変な概念に依存するゲーデルの集合論の無矛盾性証明にも重要となる。ゲーデルはほかの誰よりもはるかに早く、この区別が必要であると明白に理解していた。だが、非決定性が数学のさらなる進展にもたらすかに一見みえる困難をゲーデルが解決した方法は、自身の根本的に内観的な性質を示すように、内観によるものであった。[p.347]
しかしゲーデルの死に様の壮絶さよ。